生豆ができるまで

 コーヒー生産国では、栽培収穫精選選別という一連の工程がおこなわれ輸出しています。また各国の生産事情も様々で庭先でほかの作物に交じって作られたり、広大な大農園で生産されるなど国と地域によって異なります。


 生豆は種子の部分にあたり、生豆を取り出すためには果肉、ミューシレージパーチメントを取り除かなければなりません。この工程を精選といいます。

 精選方法は主に4つに大別され、どの精選行程を用いるかは生産環境、地理的条件、気象条件、マーケティング戦略などによって決まります。

果実(コーヒーチェリー)の構造

精選方法

名称 手順 最終乾燥状態 主な国と地域
ナチュラル / 非水洗式
Natural / Unwashed
果実のまま乾燥させ、
乾燥した果肉、ミューシレージ、
パーチメントを一度に剥ぎ取る
果実 ブラジル、エチオピア、
インドネシア(カネフォラ種)、
ベトナムなど
ウォッシュド(水洗式)
(Fully) Washed
果肉、ミューシレージを水洗
工程で取り除いた後に乾燥
させ、
乾燥パーチメントを剥ぎ取る
パーチメントコーヒー ブラジル以外の中南米、
カリブ海諸国、タンザニアなど
ハニー
Honey
果肉〜ミューシレージの一部
取り除いた後に乾燥
させ、乾燥後
パーチメントまでを剥ぎ取る
果肉ミューシレージ付き
パーチメントコーヒー
コスタリカの一部など
パルプドナチュラル
Pulped Natural
果肉を取り除いた後に乾燥させ、
乾燥したミューシレージ、
パーチメントを剥ぎ取る
ミューシレージの付いた
パーチメントコーヒー
ブラジルなど
ウェットハル(スマトラ式)
Wet Hulled (Sumatra)
果肉を取り除いた後、一次乾燥
させ、生豆を取り出した後、
仕上げ乾燥させる
生豆 スマトラ島(インドネシア)
スラウェシ島(インドネシア)
補足 ※ ハニー精選では、果肉を残す程度により呼び名が変わる。(White Honey / Yellow〜 / Red〜 / Gold〜 / Black〜など)
○ Semi-Washed : 水洗と非水洗の中間を表す方式の総称で、現在のPulped Naturalに相当する。
○ Pulped and Demucilaged : 果肉とミューシレージを機械的に取り除き、水洗工程を経ずにそのまま乾燥させる。
  このほか、代表的なもの以外にも様々な精選方法が存在し実用されている。(Eco Washed / Reposado / Anaerobicなど)

コーヒーの規格 〜No.2、SHBなどの記号の意味するもの〜

 ブラジルNo.2、ガテマラSHBなど国名の後ろに記号がついたコーヒーがありますが、これらは生産国でおこなわれている格付けの結果を反映した格(グレード)を表しています。

格付けとは
 19世紀にニューヨーク・コーヒー定期取引市場が創設されたのを機に、ブラジル産コーヒーの格付けが始まりました。現在では各生産国で独自に格付けがおこなわれています。

主要生産国の格付け
 格付けの方法に統一した国際基準はなく、各生産国の生産環境などにより独自におこなわれています。モカマタリの産地として知られるイエメンのように格付けがない国もあれば、ブラジルのようにたくさんの項目に規格を設定している国もあります。

主な格付けの大別
 1) 栽培地の標高によるもの:
   中南米、メキシコなど

 2) スクリーンサイズによるもの:
   コロンビア、ケニア、タンザニアなど

 3) 欠点数によるもの:
   ペルー、エチオピアなど

 4) スクリーンサイズと欠点数によるもの:
   ブラジル、カリブ海諸国など

栽培地の標高による格付け

生産国名 おおよその標高 規格
メキシコ 900〜1,200m HG (Altura)
600〜900m PW (Prima Lavado)
グアテマラ 1,300m〜 SHB (Strictly Hard Bean)
1,200〜1,300m HB
900〜1,050m EPW (Extra Prime Washed)
エルサルバドル 1,200m〜 SHG (Strictly High Grown)
900〜1,200m HG
ホンジュラス 1,200m〜 SHG
900〜1,200m HG
コスタリカ
(中央高地)
1,200〜1,700m SHB
800〜1,200m HB

スクリーンサイズ(豆の大きさ)による格付け

生産国名 スクリーンサイズ 規格
コロンビア S-17〜 エクセルソ スプレモ ※
S-14〜 エクセルソ UGQ
タンザニア
(アラビカ種)
S-18〜 AA
S-15〜17 AB
ケニア S-18〜 AA
S-15〜17 AB
※ 当店「コロンビアスプレモ」はエクセルソスプレモ規格を使用。

欠点数(欠点豆の混入数)による格付け

生産国名 欠点数(300gあたり) 規格 欠点数による焙煎への影響
エチオピア 〜3 Grade 1 基本的には、欠点数(欠点豆=ディフェクトの混入数量)が多くなるほどコーヒーの味わいに悪い影響を及ぼします。また焙煎ムラ(バラツキ)が起きやすくなったりと、焙煎にも影響が出ます。(原因はその全てではありません)
4〜12 Grade 2
13〜27 Grade 3
28〜45 Grade 4
46〜90 Grade 5
ペルー 〜15 Grade 1
〜23 Grade 2
〜30 Grade 3
〜35 Grade 4
〜40 Grade 5

スクリーンサイズと欠点数による格付け

生産国名 スクリーンサイズ 欠点数(300gあたり) 規格
ブラジル S-17 / 18 4 Type2 (No.2)
S-14 / 15 / 16 36 Type4 / 5 (No.4 / 5)
インドネシア 非水洗式 ラージ   7.5×7.5mm〜
非水洗式 スモール  3×3mm〜
水洗式  ラージ   7.5×7.5mm〜
水洗式  ミディアム 6.5×6.5mm〜
水洗式  スモール  5.5×5.5mm〜
〜11 Grade 1
〜25 Grade 2
〜44 Grade 3
〜80 Grade 4
〜150 Grade 5
ベトナム
(カネフォラ種)
S-16〜 〜60 Grade 1
S-12.5〜 〜90 Grade 2
キューバ S-18 〜12 ETL (Extra Turquino Lavado)
S-17 〜19 TL
S-16 〜22 AL (Altura)
アメリカ合衆国
(ハワイ コナ)
S-19 〜8 Extra Fancy
S-18 〜12 Fancy
S-16 〜18 No.1
ジャマイカ
(ブルーマウンテン)
S-17 / 18 〜3% No.1
S-16 / 17 No.2
S-15 / 16 No.3
S-16 / 17 〜5% Select (旧名称Triage)
※ インドネシアのスクリーンサイズによる分類はカネフォラ(ロブスタ)種に適用。

欠点豆の見分け方

特定銘柄について

 “ブルーマウンテン” “ハワイコナ”など特定の商品には、名称を付けるために必要な定義が設けられています。

 こうした特定銘柄は、事実と異なったり、誇張されたりした広告により消費者が不利益を被らないように、業者間の公正な競争によって消費者の自主的・合理的な商品選択に役立つよう、各業界がいろいろな商品について消費者の意見を採りいれています。その中で、実態にあった自主ルールを決め、消費者庁及び公正取引委員会がこのルールを「公正競争規約」として認定しています。

 レギュラーコーヒー、インスタントコーヒーについては全日本コーヒー公正取引協議会がルール作りをおこなっており、定義を定めています。

特定銘柄

生産国名 名称 定義(公正競争規約より)
ジャマイカ ブルーマウンテン ブルーマウンテン地区にて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。
ハイマウンテン ハイマウンテン地区にて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。
ジャマイカ ジャマイカにて生産されたアラビカコーヒー豆のうち、上記以外のものをいう。
キューバ クリスタルマウンテン キューバにて生産された同国輸出規格に基づくアラビカコーヒー豆をいう。
グアテマラ グアテマラアンテイグア アンテイグア地区にて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。
コロンビア コロンビアスプレモ コロンビアにて生産された同国輸出規格に基づくアラビカコーヒー豆をいう。
エチオピア モカハラー ハラー地区にて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。
イエメン モカマタリ イエメンにて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。
タンザニア キリマンジャロ タンザニアにて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。ただし、ブコバ地区でとれるアラビカコーヒー豆は含まない。
インドネシア トラジャ スラウェシ島 トラジャ地区にて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。
カロシ スラウェシ島 カロシ地区にて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。
ガヨマウンテン スマトラ島 タケンゴン地区にて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。
マンデリン スマトラ島 北スマトラ州及びアチェ州(タケンゴン周辺のガヨマウンテン生産地区を除く)にて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。
アメリカ合衆国 ハワイコナ ハワイ州 南コナ地区及び北コナ地区にて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。

それ以外の代表的な銘柄

コロンビア エメラルドマウンテン FNC(コロンビアコーヒー生産者連合会)が独自の品質基準のもとに認定しているコロンビアコーヒー全生産量の中でもわずか1〜3%未満の高級コーヒー豆の呼称。

コーヒーの品種

 コーヒーは精選方法や焙煎度合いによって味わいが変わりますが、品種自体にも豆の形や味わいに個性があります。品種による違いは味だけではなく、病虫害耐性の有無やコーヒーの実のつき方(収穫のしやすさや収穫量)など生産者側にとって大きな問題であったため、これまでにさまざまな品種改良の試みがなされてきました。

主なコーヒー品種
 さまざまな品種が突然変異や違う品種のかけ合わせなどにより存在していますが、大別するとアラビカ種、カネフォラ種(ロブスタ)、リベリカ種の3つに分かれます。そのうち、スペシャルティコーヒーなど高品位な香味を有するのはアラビカ種です。

 1) アラビカ種:エチオピア発祥。豊かな風味と酸味をもち世界中で愛飲されている品種。カネフォラ種と比べて耐病性が低い。

   1-1) 原種:ティピカ、ブルボン、ゲシャ(オリジナルゲイシャ)など。

   1-2) 交配種:カチモール、カトゥアイ、SL28 など多数。改良し耐病性の高いものが多い。

 2) カネフォラ(ロブスタ)種強い苦みがあり、主にインスタントコーヒーやエスプレッソ粉の苦みなど工業製品の原料に使用。

 3) リベリカ種:アフリカのリベリア原産。生産量が少なくほぼ流通していない。主に自国消費される。

コーヒー品種の現状
 コーヒー豆の品種改良によりさまざまな新種が生まれましたが、それらは安定した栽培や収穫量の多さを目指すという生産者都合であったため、消費者にとって大切な「より美味しいコーヒー」の追求とは必ずしも一致しませんでした。

 近年、ティピカやブルボン、ゲイシャなど、原種または原種に近いコーヒーのもつ繊細で複雑な味わいが品評会などで高く評価されたことから、生産性は低いながらも見直されたそれらの品種を扱う生産者が増えてきました。現在、栽培する土地に合った、生産性も味わいも兼ね備えた品種の選定、そしてより良い精選方法が中米を始めとする各国の高品位コーヒー作りの現場で試行されています。

コーヒー品種一覧

クロップについて

クロップとは農産物としての生豆(なままめ)を意味します。コーヒーは収穫後の時間経過によって呼び方が変わります。
ニュークロップ
カレントクロップ
パーストクロップ
オールドクロップ
収穫したばかりの鮮度の高い状態(収穫後から半年程度)のもの。
ニュークロップよりもやや経過(収穫後1年未満)したもので、次の収穫が近づいたもの。
前年度産で収穫後1年経過したもの。
前年度より以前に収穫されたもの。
また、収穫後に寝かせてつくるエイジングコーヒーなどもあります。
※ 当店ではニュークロップとカレントクロップのものをフレッシュクロップ(新豆)としています。



※ここでの情報は基本的なことであり、その全てではないことをご了承願います。

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